Live Report│グルーヴは、言葉より深く響く。Kroi × D.A.N.が描いた一夜限りの交差点
Live Report│グルーヴは、言葉より深く響く。Kroi × D.A.N.が描いた一夜限りの交差点

Live Report│グルーヴは、言葉より深く響く。Kroi × D.A.N.が描いた一夜限りの交差点

2026.07.17Live

ライブ映像公開中

情報に溢れた現代、音楽も同じように、日々かつてない速度で生まれ、共有され、消費されている。だが時として、言葉よりも先に、身体の奥へと届く音がある。歌詞やMCに込められたメッセージだけではなく、鳴らされた一音、揺れ続けるリズム、会場全体を包み込むグルーヴそのものが、時に言葉以上に深く心を震わせる。「生きていく 好きな曲がふえていく」というスローガンを掲げた「M bit Project」のメイン企画であり、一夜限りのスペシャルライブ企画「M bit Live」は、異なる個性を持つアーティスト/バンドの共演を通して、新たな音楽との出会いの場を生み出してきた。第1弾のOriginal Love Jazz Trio x STUTSをはじめ、UA x アイナ・ジ・エンド、ASIAN KUNG-FU GENERATION x Omoinotake、Awich x iri、HY x マカロニえんぴつ、Dragon Ash x Age Factoryと、これまでも世代やシーンの境界線を超えたアーティスト/バンドの共演を実現。予期せぬ組み合わせが生む化学反応によって、リスナーの中に“好きな曲”がまたひとつふえていくような一夜を届けてきた。

静かに深く、心を揺らす。D.A.N.が誘った音の旅

そんな「M bit Live」の第7弾が、6月24日(水)にKT Zepp Yokohamaで開催された。共演するのは、ブラックミュージックを基盤にあらゆる音楽ジャンルを吸収し、独自のミクスチャーサウンドへと昇華し続ける5人組バンド・Kroiと、ミニマルかつメロウなサウンドで結成以来、音楽シーンで唯一無二の存在感を示し続ける3人組バンド・D.A.N.。デビューの時期やファン層も絶妙に違う両者は、一体どのような化学反応を見せたのだろうか。お互いの音と想いの交錯した一夜の模様をお届けしよう。

ステージ後方のスクリーンで、竹中直人によるナレーションと共に、これまでの「M bit Live」を振り返るオープニングムービーが流れ、客席から歓声が上がると、まずステージに現れたのはバンドの先輩に当たるD.A.N.。市川仁也のベースと川上輝のドラムがタイトに絡み合い、櫻木大悟の透き通るようなハイトーンボイスによるボーカルが重なる“Ghana”でライブの口火を切ってみせ、KT Zepp Yokohamaは一気にダークで都会的な空気に。ちなみに“Ghana”はライブの定番曲でありつつ、6月7日(日)に放送されたJ-WAVE『M bit Project AS YOU LIKE IT』に櫻木とKroiの内田怜央が登場した際、内田が学生時代に衝撃を受けたと話をしていた曲でもある。誰かの記憶に深く残ってきた一曲が、この夜また新たな観客の体験として刻まれていく。その流れは、「生きていく 好きな曲がふえていく」というスローガンにも自然と呼応していた。

さらに「D.A.N.です。よろしくお願いします」という櫻木の控えめな挨拶から、D.A.N.は“SSWB”、長尺曲“Tempest”と続け、言葉ではなく音そのものでオーディエンスとの深い対話を重ねていく。そして、この日リリースされたばかりの“The Unknown”へ。バンド史上最も攻撃的と言ってもいい歪んだ音の嵐と、美しいボーカルの織りなすサウンドスケープは圧巻。加えて驚くべきは、そのディープな没入感ある音の世界に意識が沈み込んでいく一方で、身体は抗えず自然と揺れていたことだ。おそらく、これこそがD.A.N.をD.A.N.たらしめている理由だろう。まるでインナートリップとでも呼びたくなるような内省的な感覚とダンスの融合である。

次の“Purple Sunshine”で、D.A.N.はより深くドラマチックな音の世界へとオーディエンスを誘い、“No Moon”でエモーショナルかつ神々しいラストへ。「D.A.N.でした。ありがとうございました。次はKroiです」と告げ、スマートにバトンを繋いでいたが、胸を締めつけるような余韻の残る、素晴らしいパフォーマンスだった。

リスペクトが導いた化学反応。Kroiが鳴らした新たなサウンド

その強力な余韻をそのままに、Kroiはイントロを長めにとった“HORN”でライブをスタート。ポップかつ煌びやかなメロディーという点ではD.A.N.とは正反対かもしれないが、ダンスを誘発する点では共通しているだろう。そして、Kroiがそれを明確に意識し、D.A.N.へのリスペクトを込めてパフォーマンスしていたであろうことはその後のセットリストからも見えてくる。

“HORN”からアレンジの施された“Psychokinesis”、内田のシャウトも輝く“Network”、ファンキーな“Drippin' Desert”まで、Kroiは途切れることなく、ときおり圧倒的な演奏力を見せながらスムースにプレイ。つまり、D.A.N.がじっくりと巻き起こした内省的なダンスのグルーヴに、ポップかつテクニカルなKroi色のグルーヴを重ねていったのである。続く最初のMCで、Kroi側からのラブコールでこの日の組み合わせが実現したことを内田が嬉しそうに話していたのも、それを裏付けているようだった。

ライブの後半でも、メロディアスな“Pixie”から、原曲よりも少々テンポを上げ、後半は火花を散らすセッションに発展した“侵攻”、ゆったりとしたサウンドとラップの映える“Polyester”、じっくりと熱を帯び、エモーショナルに爆発する“Shincha”と見事なグルーヴを繋ぎ、ラストは“dart”。ライブではいたるところにアレンジを組み込むことで知られるKroiのメンバーの演奏スキルが火を吹く1曲で、ベースの関将典、キーボードの千葉大樹、ギターの長谷部悠生、ドラムの益田英知によるソロはこの日の一つのクライマックスと呼べるだろう。最後にD.A.N.のメンバーをステージに呼び込んで、全員で写真を撮影。ステージ上に並んだメンバーたちの表情からは、互いの音を受け止め、響かせ合った時間の充実感が滲んでいた。

音が交わり、好きな曲がまたひとつふえていく夜

キャリアの先輩として、後輩バンドの期待を一身に引き受けて自分たちの音楽を徹底的に表現したD.A.N.と、かねてよりリスペクトするD.A.N.との共演だからこそというライブを届けてみせたKroi。振り返ってみれば、ただならぬ想いの交わった一夜であったことを、終演後も名残惜しそうに会場にとどまる両者のファンたちの姿からひしひしと感じたのだった。きっと、彼/彼女たちはこの夜をきっかけに好きな曲がふえたのだろう。どれだけ情報に溢れた時代に生きていても、ライブハウスという空間で生まれる音の交差点には、そこでしか得られない熱と記憶がある。そう強く確信させてくれる一夜だった。

さて、次の「M bit Live」では、どれだけ濃密な音楽との出会いが私たちを待っているのだろうか。

ライブ映像公開中

Photo:笹塚清明
Text:高久大輝

Information

M bit Live #7

2026.6.24 WED@KT Zepp Yokohama