Live Report│じっくり味わい、思いきり踊る。大橋トリオ x Penthouseがひらいた音楽の自由
Live Report│じっくり味わい、思いきり踊る。大橋トリオ x Penthouseがひらいた音楽の自由

Live Report│じっくり味わい、思いきり踊る。
大橋トリオ x Penthouseがひらいた音楽の自由

2026.09.14Live

ライブ映像公開中

落ち着いた曲が好き。ポップでキラキラした曲が好き。音楽の好みは人それぞれだろう。だが、普段は聴かないような曲と不意に出会い、いつの間にか繰り返し聴いているなんてことも珍しくないはず。

「生きていく 好きな曲がふえていく」を掲げる「M bit Project」のメイン企画「M bit Live」は、Original Love Jazz Trio x STUTS、UA x アイナ・ジ・エンド、Kroi x D.A.N.など、これまで世代やシーンを越えた一夜限りの共演を実現。新たな音楽と出会う、かけがえのない瞬間を生み出してきた。

それぞれの現在地を携えて。
今、大橋トリオとPenthouseが出会う理由

その第8弾として8月25日にZepp Shinjukuで顔を合わせたのが、大橋トリオとPenthouseだ。奇しくも今年3月、Penthouseは自身初となる日本武道館単独公演「By The Fireplace」を開催。そのわずか2日後には、大橋トリオがロックをテーマに据えた17枚目のアルバム『A BAND』をリリースした。さらにPenthouseは7月、武道館公演を経てさらに磨かれたサウンドを封じ込めた3rdアルバム『Neon Garden』を発表。大橋トリオも『A BAND』を携えた全国ホールツアーを終え、8月19日には新進気鋭のミュージシャン、luvisを作詞・作曲・編曲で迎えたシングル“Day of the green”を発表したばかりと、両者にとって現在進行形の活動が交差する絶好のタイミングでの共演となった。

さらに大橋トリオとPenthouseの浪岡真太郎は、蔦谷好位置、mabanuaと共にThe Carvingとして今年、FUJI ROCK FESTIVAL'26に出演。同フェスでも行動を共にするなど、音楽を越えて親交を深めている。世代もキャリアも異なる中、接点も見出している2組の音楽は、この夜どのように響き合ったのだろうか。一夜を振り返っていこう。

緻密なアンサンブルと遊び心。
大橋トリオが織りなした豊かな時間

竹中直人のナレーションによるオープニングムービーで、今回の「M bit Live」が幕を開けると、鳥のさえずりと共に大橋トリオがステージに現れる。カウントダウンから“THUNDERBIRD”でライブをスタートするとファンキーなバンドアンサンブルが花開く。バンドメンバーは高木大丈夫(ギター)、神谷洵平(ドラム)、須長和広(ベース)、武嶋聡(サックス)、Bialystocksの菊池剛(キーボード)と精鋭揃いだ。

簡単な挨拶から、『A BAND』収録の“君とのダンス”が始まるとさらに研ぎ澄まされた演奏が弾け、オーディエンスから歓声が漏れる。MCではバードコールを鳴らしておどけると、リリースしたばかりの“Day of the green”へ。luvisのフレッシュなセンスが息づくこの曲で、爽やかな風がZepp Shinjukuに吹き込んでくる。若い才能とのコラボレーションを自然に自身の音楽へ取り込む、大橋トリオのしなやかさが垣間見える瞬間だった。続く“A BIRD”では、長年ライブで磨かれてきたアンサンブルの豊かさを存分に見せつける。

さらに菊池剛のオルガンによるイントロから“赤い傘”、大橋のファルセットが響く“水中のメトロ”で会場全体に極上の癒しの時間が訪れ、MCへ。「フェス以外でスタンディングでライブを観てもらうのはいつぶりでしょうか?」「良いですね、これも」といつもと違った光景を目の前にして嬉しそうに笑う姿が印象的だった。そして「スペシャルシークレットゲスト」としてPenthouseのボーカル、浪岡真太郎と大島真帆が登場。大橋が「ナミオロメン」「マホマホ」と親しみを込めたニックネームで呼び、会場は和やかな空気に。大橋と浪岡のくだけた会話に花が咲いた後は、そのまま二人を迎えて“ポラリス”を披露。緩やかなテンポの中で次第に熱を帯びるバンドを背に、大橋のアンニュイな歌声と浪岡・大島のソウルフルなボーカルが激しく交錯する様は圧巻だ。スタンディングライブにぴったりの熱いハイライトに、曲を終えるとすぐ大島が「楽しい〜!」と、観客の心の声を代弁してくれた。

濃密なコラボの後も大橋トリオは“そんなことがすてきです。”でムードを高め、ラストは代表曲“HONEY”。繊細でハートウォーミングなラブソングで会場をうっとりさせ、ライブを締めくくった。

ポップのきらめきがフロアを包む。
Penthouseが駆け抜けた祝祭のステージ

転換を挟んでPenthouseがオンステージすると、先ほどまで大橋トリオが作ったあたたかい空気の上に、さっそく激しくポップでカラフルなサウンドを投下。“Welcome to the Penthouse”、“我愛你”と、コール&レスポンスを交えてフロアを巻き込んでいく。そのままの勢いでグルーヴィーな“一難”へと突入し、改めて大橋トリオとの共演への喜びを語るMCを挟んで発声練習へ。

「いけんのか!?」と叫ぶ浪岡に「イエー!!!」とフロアから力強い声が跳ね返り、大島も観客を先導するように、パワフルな歌声と全身を使ったパフォーマンスで熱を煽っていく。フロアのボルテージは早くも急上昇だ。

その後も跳ねるようなサウンドの上をパワフルかつキャッチーなツインボーカルが疾走する、夏にぴったりのナンバー“恋する神様”、タオルを回してフロアが盛り上がった“隣の恋は青”、Penthouseらしさ全開の爆発的ポップソング“Minute by Minute”と続け、会場と一体に。そして、MCの時間になると大橋トリオが呼び込まれる。大橋と浪岡の仲睦まじいエピソードに微笑んでいると、“Balloon”でのスペシャルコラボへ突入!大橋トリオはボーカルだけでなくキーボードでも参加し、軽やかでジャジーなタッチを加えながら、Penthouseの華やかなバンドサウンドにしなやかな奥行きを生み出していく。軽快なエネルギーのやり取りによって美しいハイライトを生み出すと、「混ぜてもらえて本当に嬉しい」と、大橋は笑顔で去っていった。

あっという間にライブは終盤へ。“...恋に落ちたら”でシンガロングを巻き起こし、“Planetary”で再びコール&レスポンスを交わすと、最後は“一二三”でフロアから一斉に手が上がり大団円。拍手は鳴り止まず、アンコールでは“Taxi to the Moon”を披露。各楽器のソロも冴え渡り、ベースソロではなんと宇多田ヒカル“traveling”のメロディを織り交ぜる一幕も。最後まで遊び心に満ちた、素晴らしい締めだった。

重なるルーツ、異なるスタイル。
2組が残した鮮やかな余韻

ちなみに、この日の転換や客出しのBGMとして流れていたのは、大橋トリオとPenthouse、両者のルーツにあるであろうスティーヴィー・ワンダーだった(大橋・浪岡・大島が出演した事前のラジオ番組でも、大橋が選曲していた)。そんな選曲も、この日の共演を象徴していたのではないだろうか。

繊細なアンサンブルに身を委ね、じっくりと音を味わう大橋トリオのライブと、コール&レスポンスやシンガロングを交え、全身で音楽を楽しむPenthouseのライブ。その楽しみ方は一見異なるようでいて、ステージが進むにつれ、それぞれのファンが互いの音楽に身体と心を預け、一つのフロアに溶け合っていく光景が何度も生まれていた。

ジャンルも世代も関係ない。聴き方だって縛られる必要はない。知らなかった音楽に出会い、心が動けば、また新しい「好きな曲」が生まれる。「生きていく 好きな曲がふえていく」。音楽を自由に楽しむことの喜びと可能性を、改めて実感させてくれる「M bit Live」だった。次はどんな音楽が、私たちの「好き」に加わるのだろうか。

ライブ映像公開中

Photo:TAWARA(magnese)
Text:高久大輝

Information

M bit Live #8

2026.08.25 TUE@Zepp Shinjuku